「パン作りの製法」について。

製パン豆知識



今回はパン作りの製法をいくつか紹介します。


色々なパンの製法を知っておけば、自分のライフスタイルに合わせたパン作りができたり、時間を有効活用したパン作りができたりします。

自分の理想のパンに近づけるためにも、絶対役に立つので、いくつか紹介します。


基本の製法

1、ストレート法

ストレート法は「直捏法」や「ディレクト法」とも呼ばれます。


この「ストレート法」一番、基本となる製法です。

ミキシング(練る工程)が1回(1工程)でパン生地を作る方法です。


実際にパン屋さんの現場でもこの「ストレート法」はよく使われています。

一番シンプルでレシピ本やネット上のレシピもほとんどがこの製法で書かれています。


「ストレート法」のメリットは、、
1、ミキシングから焼き上がりまでの全製パン工程が比較的短い。
2、工程が単純で道具や発酵スペースが少なくて済む。


「ストレート法」のデメリットは、、
1、生地の発酵、水和の時間が短いので、乾燥しやすく、硬化が速い。
2、基本の製法であるため、工程1つ1つをちゃんと理解しないと、安定したパン作りができない。

2、中種法

中種法は「スポンジ法」とも呼ばれます。




「中種法」は「ストレート法」とは違い、2工程に分けてパン生地を作っていきます。

1回目のミキシングで「中種」を作り、2回目のミキシングで生地を完成させます。

「中種法」の基本は使用する粉の50%以上を先に練っておいて、一度発酵させます(約4時間)。
その後、残った材料を入れて生地を完成させます。



「中種法」のメリットは、、
1、進展性が良く、ボリュームのあるパンが出できる。
2、生地の水和が進み、保水性が上がり、しっとり柔らかく、パンの硬化が遅い。

「中種法」のデメリットは、、
1、2工程に分かれているので、ミキシングから焼き上がりまでの製パン工程が長くなる。
2、発酵時間が長いため、発酵臭が強くなりやすい。

3、ポーリッシュ法

ポーリッシュ法は「液種法」や「水種法」とも呼ばれます。



「ポーリッシュ法」は「中種法」と似ている製法です。

異なる点としては「水分量」です。

「ポーリッシュ法」は「液種法・水種法」とも呼ばれているように、「液体のように緩い発酵種」です。

基本的に「粉:水」の割合が「1:1」になるように作ります。

また、「ポーリッシュ種」は生地全体の20~40%までと定義されています。

それ比べて「中種法」に決まりがありません。
(しかし、一般的には50%以上を中種として使うことが多いです。)




「ポーリッシュ法」のメリットは、、
1、比較的、大きな気泡が広がりやすく、歯切れのよいパンができやすい。
2、イースト量を少なくして、熟成させているので、焼き上がったパンの香りが良い。

「ポーリッシュ種」のデメリットは、、
1、「ポーリッシュ種」が液体状なので、大量に仕込む場合はスペースが必要になる。
2、比較的、水分量が多く、生地がまとまりにくく、ミキシングに時間がかかる。


4、オーバーナイト法

オーバーナイト法は「長時間発酵法」とも呼ばれます。

冷蔵庫などの「低温場所で発酵させる」場合は「低温長時間発酵」ということもあります。



「オーバーナイト法」はパン屋さんではよく使う製法です。

特に「ハード系(バゲット生地)」や「ピザ生地」などでよく使う製法です。


前日に生地を仕込んでおいて、発酵器や冷蔵庫などで長時間発酵させて、翌日、パンを焼く製法です。


最近では「捏ねないパン」や「混ぜるだけのパン」などという名前で有名になりました。

家庭でも簡単に作ることができますし、また、冷蔵庫や野菜室で発酵させるため、季節にあまり関係なく発酵温度のコントロールのしやすさが、注目されています。

私自身、家でパンを作る時、「オーバーナイト法」をよく使います。


「オーバーナイト法」のメリットは、、
1、発酵に冷蔵庫や野菜室などを使うことが多く、季節に関係なく発酵の温度管理が比較的しやすい。
2、「仕事をしない時、寝ている時」に発酵させるので、時間の有効活用ができる。



「オーバーナイト法」デメリットは、、
1、長時間発酵させるためのスペースが必要になる。
2、長時間発酵のせいで酸味が出たり、固まったり、溶けてしまう材料などには、注意しなければいけない。

5、発酵種法

発酵種法天然酵母」を使う製法の総称です。




「発酵種法」は基本的に天然酵母(フルーツ種、ルヴァン種、サワー種)などを使う製法です。

正直、一番複雑で時間がかかる製法です。

また、一つ一つの工程はシンプルですが、温度管理や衛生管理など気を使うことが多いです。

「天然酵母パン、ライ麦パン」などでよく使う製法です。


「発酵種」のメリットは、、
1、発酵種独特の香りがパンに移り、自分だけ(そこのお店だけ)のオリジナルパンができる。
2、長時間熟成されているので、パンの硬化、老化が遅い。


「発酵種」のデメリットは、、
1、発酵時間が一定ではなく、また発酵に時間がかかる。
2、発酵種は長期的に使っていくことが多く、管理が難しい。

6、ノータイム法

ノータイム法は「クイックブレッド()」とも呼ばれます。


「ノータイム法」はパン屋の現場においてはあまり使われない製法です。

「ロティ/チャパティ」や「ナン」などのインドやネパール料理などでカレーと一緒に食べる「平たいパン」や「バナナブレッド」やイギリス(アイルランド)発祥の「ティーブレッド」などを作る時に使う製法です。


「ノータイム法」の特徴は「イーストではなく、ベーキングパウダーや重曹」などを使うことです。


「ノータイム法」のメリットは、、
1、発酵時間がいらない。
2、家庭用オーブンやフライパンなどでも焼くことができるものがほとんど。


「ノータイム法」のデメリットは、、
1、イースト発酵させないので、ふっくらとボリュームのあるパンが作りにくい。
2、焼き立てが一番おいしく、その後は乾燥しやすく、老化が速いものが多い。


他の製法

ここからは、上記で説明した基本の製法に組み合わせて使うことが多い製法です。

1、オールイン法

「オールイン法」とはすべての材料を1回で加える製法です。

基本、油脂が入っているレシピ(菓子生地や食パン生地)などは、まず、ある程度生地を練ってから、つなげた状態で油脂を入れます。
そこからまた、練っていきます。

それに比べオールイン法では、「初めから油脂も含めすべての材料を一気に」ボールやミキサーに入れて、ミキシングします。

「ベーグル」「フォカッチャ」などでよく使う製法です。

2、オートリーズ法

「オートリーズ法」とは別名「後塩法」とも呼ばれ、塩を後から入れる製法です。

最初に「粉、水、モルト」などをざっくり混ぜ、「15~20分」放置します。
その後「イースト→塩→油脂(必要であれば)」と工程が進んでいきます。

最初に「粉と水」を合わせて、放置しておくと、「水和」が進みます。
この水和が進むことによって、練らなくても勝手にグルテンが出て、その後、生地を練りやすくなります。
※「水和とは」小麦粉の芯(中心)まで水分がいきわたることです。


基本的に加水量が多い生地で使う方法です。

水分が多い生地はミキシングが難しく、時間もかかってしまいます。
そのため、「15~20分」放置することで、水和を進め、ある程度グルテンが形成することで、ミキシングがしやすく、また、結果として、時間を短縮することができます。

「バゲット」や「チャパタ」、また加水量が多い「食パン」などで使う製法です。

3、湯種法

「湯種法」は「粉とお湯」をあらかじめ練っておいたものを、生地に加えて練る製法です。

粉とお湯を練ることで「͡糊化(ゲル化)」します。

この糊化した湯種を生地に加えることで、生地がもっちりとして、また生地の硬化を遅らせる効果があります。

「食パン」や「山型食パン」によく使われる製法です。

4、老麺法

「老麺法」は古くから中国で饅頭の皮などに使われていた製法です。

前回の生地を少し取っておいて、それを新しい生地に入れてパンを作る方法です。


近年のパン屋さんでは「中途半端に残った生地、過発酵した生地などを新しいパン生地に加える」などの「ロスをなくす形」でよく使われています。

もちろん、「ミキシング時間の短縮」や「発酵を安定」などを目的として使用をしているところもあります。

「ブリオッシュ」などの比較的、ミキシング時間が長い生地に使われる製法です。

5、バシナージュ法

バシナージュ法は「足し水法」とも呼ばれます。


「バシナージュ法」は「チャパタ、パンオロデブ、セーレン」などの高加水パンによく用いられます。

これらのパンは加水率が80%前後あり、多いものでは100%近いものもあります。


始めから、80%の水を加えると、なかなか生地がまとまらず、場合によっては生地を傷つけてしまったり、長時間のミキシングにより、捏上温度が上昇しやすくなります。

「バシナージュ法」はそれからを防ぐために、あらかじめ70%前後の加水で生地をしっかり作り、出来上がった生地に後から「調温した水」を追加(足し水)していくという方法です。

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