「モルト」について。

製パン豆知識

皆さんは「モルト」とか「モルトシロップ」、「モルトパウダー」って聞いたことありますか。

この「モルト」は、小さなパン屋さんや有名店、大手製パン工場でも、パン作りにおいて「意外に重要な材料」の1つです。

今回は、そんな意外に重要な材料「モルト」について、お話していこうと思います。

モルトって何?

まず最初に「モルトって何?」ですよね。

「モルト」は英語なので、日本語に直すと「麦芽」になります。

「麦芽」とは大麦の種子を発芽させたもので、ビールやウイスキーの原料にもなります。

そして製パンにおいての「モルト」とは麦芽を糖化して、濃縮したものです。

シロップ状なら、「モルトシロップ」、パウダー(粉末)状なら「モルトパウダー」と呼びます。


現場では、「モルトシロップ」を使うことが多いです。

そして、基本モルトは「バゲットやライ麦パン」などの砂糖が入らない生地、もしくは砂糖が少ない生地に使用します。

菓子パン生地やデニッシュ生地などには使わないことが多いです。

モルトの成分とその効果は?

モルトの主な成分は酵素です。

そして、その中でも製パンにおいて重要な酵素は2つあります。

①、アミラーゼ (でんぷん分解酵素)
②、プロテアーゼ (タンパク質分解酵素)



この2つはもともと小麦粉にも含まれている酵素です。

①、アミラーゼの効果

「アミラーゼ」はでんぶんを分解して麦芽糖を作ります。

麦芽糖はイーストの餌、栄養となるので、発酵の手助けをする効果があります。

また、生地中の糖分が増えることで焼き色や香りの向上にもつながります。


「砂糖を含まないor少ない生地に「モルト」を配合することで、これらの効果が得られます。

もともと砂糖が多い生地は、生地中にすでに十分な量の糖分があるので、「モルトをわざわざ配合する必要がない」ということです。

②、プロテアーゼの効果

もともとプロテアーゼは小麦粉に含まれている酵素です。

プロテアーゼにはグルテンの伸びや炭酸ガスを保持する効果があります。


そのためモルトを配合することで生地中のプロテアーゼが増え、それらの効果をサポートします。

特にバゲットや高加水のパン生地などは発酵時間が長いので、「モルトを配合することで、生地の状態の向上や改善」の効果が得られます。

モルトの配合量は?

モルトはシロップもパウダーも量には気を付ける必要があります。

基本モルトの配合量は(ベーカーズ%)↓↓

モルトシロップは0.3~0.5%
モルトパウダーは0.1~0.3%


配合量が少なすぎると、効果を十分に得ることができません。

また多すぎると、パン生地の色が濃くなりすぎたり、味が変化してしまったりします。


そのため、基本は上記の配合量ですが、メーカーや商品によっては異なるので、商品説明欄はしっかり読むようにしましょう。


モルトの代用品

パン生地にモルトを配合することで、製パン性の向上につながります。

パン作りにおいて、小麦粉やイースト、塩や砂糖などは必需品です。

また、それらの材料はパン以外の料理やデザートなどに使うことができます。

それに比べてモルトは正直、使う場面が少なく、配合しなくても十分においしいパンを作ることができます!


そのため、モルトを家に常備している人は少ないと思います。

そこで、モルトの代用品としては、、「麹」です!!

麹の中には「アミラーゼ」と「プロテアーゼ」が多く含まれています。

モルトと同じ酵素が含まれているので、配合すれば、同じような効果が期待できます。

「粉麹」というパウダー状になっている商品があるので、それを使えば、麹を戻したりする必要がないのでおすすめです。

※粉麹は粒状の麹より酵素の力が少し弱いと言われていますが、問題ないと思います。

まとめ

これらがモルトの成分や効果です。

モルトを適量配合することで、製パン性を向上させることができます。

上記でも説明した通り、絶対に必要な材料ではありませんが、安定して美味しいパン作りをするためには、意外と重要な材料です。


実はモルトにはもう1つ使い方があります。

それはベーグルを茹でる(ケトリングする)際にお湯の中にモルトを溶かし入れることがあります。

ベーグルの表面に糖分が付着することで、「艶が出て」、「パリッ」としたベーグルを焼くことができます。

パン屋さんではこういったモルトの使い方もあります。

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