【雑談】「天然酵母とイーストの併用」について。

製パン豆知識


天然酵母とは果物や野菜などに付着している、菌(微生物)を培養して、増やしたものです。

市販のイーストと呼ばれるものは、パン作りに適した菌だけを集めて、培養したものになります。

パンを作るため、パンを膨らますことを目的として作られているので、安定したパン作りができます。

それに比べて、天然酵母には、様々な菌が含まれているので、発酵力が不安定で発酵に時間がかかってしまったり、嫌な酸味が出てしまうこともあります。

しかし、この様々な菌があるおかげで、市販のイーストにない「風味や旨味」を出すことができるのが特徴です。

天然酵母は安定しない

天然酵母は菌を培養して作ります。

菌とは微生物=生き物です。

生き物なので、毎回、同じ味で、同じ発酵力を安定して作ることは難しいです。

温度や時間(発酵の見極め)調節を上手にしないと、酸味が強くなってしまったり、嫌なえぐみが出てしまったりもします。

また、発酵力が弱い時にパンを作ってしまうと、無駄に発酵に時間がかかってしまったり、あまり大きく膨らまなかったりすることもあります。

お店で使う機材

パン屋さん、特に個人店や大手チェーン店などでは天然酵母パンをよく見かけます。

お店に出すパンは商品なので、毎日同じ味にしなければいけません。

天然酵母は生き物なので、安定したパン作りが難しいです。

そのため、お店では機材を使用して、できるだけ、毎日同じ条件で作ることが重要になります。

そこで、お店ではどんな、機材を使っているのか紹介します。

1、発酵種発酵器
2、冷蔵庫、ホイロ、ドウコン

1、発酵種発酵器

天然酵母を作る/かけ継いでいくためには「温度管理と撹拌」が重要になります。

「温度管理」に関しては、パン生地を作る時と同じで、発酵させるためです。

「撹拌」に関しては、ミキシングと似ているのですが、天然酵母は、「ミキシング→発酵→粉、水等を追加して、ミキシング」このよう工程を何度も繰り返します。

意外と工程が多く、毎日この作業をするのは結構大変です。

そこで、発酵種発酵器」を使うことで、セットした時間に自動で、温度調節と撹拌をしてくれます。

これが1台あるだけで、スタッフの負担を減らし、なおかつ、毎日同じ環境下で作ることができます。

2、冷蔵庫、ホイロ、ドウコン

これらは、「1の発酵種発酵器」がない職場でよく使う方法です。

基本、パン屋さんでは冷蔵庫、ホイロ、ドウコンはパン生地を発酵、解凍させるために使います。

これらの機材を使っても「天然酵母を作ったり、かけ継いだりすることができます。

ただ、発酵種発酵器と違って、1台で自由に温度を変えたり、撹拌したりと全部の工程はできないので、人の手で、撹拌したり、移動させたりとしなければいけません。

しかし、これらの機材は大体のどこの現場にもあるものなので、発酵種発酵器が買えないor置く場所がない。状況でもできます。

実際に小さい個人店などでは、これらの機材を上手に使って天然酵母を作っています。

天然酵母とイーストの併用

作りやすくする

基本、天然酵母パンは天然酵母のみでパンを発酵させます。

しかし、季節や天候に合わせた温度管理や衛生管理などを考えると、すごく大変です。

また、店頭には多くの種類のパンが並びます。

発酵時間、温度が異なる生地がたくさんあり、成形や焼成時間も様々です。

発酵時間も長く、安定しない天然酵母パンは、時と場合によっては、やっかいものになってしまいます。

そこで実際に現場で行われている解決策は「天然酵母とイーストの併用」です。

天然酵母とイーストを併用することで、天然酵母独特の風味、酸味や甘味を残しつつ、イーストの力で、安定した発酵力を得ることができます。

こうすることで、日々の工程に、天然酵母パンを組み込みやすくなります。

イーストと併用しても天然酵母と名乗れる!?

イーストと併用しても「天然酵母パン」と名乗ってもいいの?

結論から言うと、天然酵母と名乗っても問題はありません。

なぜなら、バゲットと同じで、日本には明確なルールがありません。


そのため、パン屋さんで天然酵母と書かれているパンを見ても、ほとんどの人が気にかけないのが、現状です。

実際、「天然酵母パン」や「天然酵母の〇〇パン」と名前がついていても、イーストと併用しているお店も多いです。

フランスやヨーロッパではどうなの?

フランスやヨーロッパでは、基本「〇〇ルヴァン」や「サワー〇〇」のように名前がついているものが天然酵母パンになります。

以前、先生(有名なパン職人)に聞いたところ、基本、これらのパンは天然酵母のみを使用するそうです。

しかし、この「〇〇ルヴァン」に限って言うと、0.2%まではイーストを併用しても天然酵母と名乗っていいことになっているそうです。

それ以外のパンに関しては、使っているか使っていないか正直わからないことがほとんどです。

例えば、クロワッサン生地はよく、10%前後「ルヴァン」と呼ばれる天然酵母が配合されています。

この場合、あくまでもイーストで膨らまして、天然酵母は風味や日持ちの良さなどを目的として配合しています。

つまり、ヨーロッパでは「イーストと併用するものは基本、名乗らない」ことが多いそうです。

逆に言うと、○○ルヴァンなどと名がついているものは自信を持って天然酵母ということですね。

まとめ

やはり、日本は昔からパン文化がある国ではないので、バゲットや天然酵母パンなどの基準/ルールがありません。

そのため、「天然酵母の○○パン」や「天然酵母使用○○パン」などのように様々な名前で売られています。

ちなみに私が以前いた、大手製パン会社では、天然酵母とイーストを併用したパンの商品名は「天然酵母使用。○○パン」と名前でした。

つまり、「あくまでも、何%かわからないけど、天然酵母が含まれているよ。」という名前にして販売していました。

このようにお店でも、天然酵母とイーストの併用は意外とある話です。

家庭で作る際も、天然酵母とイーストの良いとこどりをして、天然酵母(使用)パンを作ってみるのも面白いと思います。

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